お金を貸したまま、長い時間がすぎていませんか。あるいは、借りたお金の返済が止まったままかもしれません。個人間融資のお金にも、時効という仕組みがあります。ただし、その年数や条件は、思っているより入り組んでいます。
この記事では、個人間融資の時効が何年で成立するのかを、順番に整理します。数えはじめる時点や、時効がリセットされる場面、主張のしかたまで、やさしく説明します。貸した側と借りた側、どちらの不安にもこたえる内容です。
個人間融資とは?まず仕組みを整理
個人間融資という言葉には、実はいくつかの顔があります。家族や友人どうしの貸し借りもあれば、SNSで知らない人とお金をやりとりするものもあります。同じ言葉でも、リスクの大きさはまるで違います。まずは全体像をそろえておきましょう。
個人間融資はどんな貸し借りを指すのか
個人間融資とは、銀行や消費者金融などの業者を通さず、個人どうしでお金を貸し借りすることです。親が子に貸す、友人にお金を立て替える。こうした身近なやりとりも、すべて個人間融資にふくまれます。
営利を目的としない個人どうしの貸し借りそのものは、違法ではありません。個人間融資は、それ自体が罪になる行為ではありません。ただし、お金がからむ以上、後々のトラブルはつきものです。だからこそ、時効のルールを知っておく意味があります。
親族・友人間とSNS募集型は何が違うのか
同じ個人間融資でも、相手との関係で性格が大きく変わります。親族や友人との貸し借りは、信頼を土台にしたやりとりです。返済の話もしやすく、書面を交わすこともできます。
一方で、SNSや掲示板で見知らぬ相手と行う募集型は、まったくの別物です。相手の素性がわかりません。お金だけ受け取って連絡を絶つ、といった事例もみられます。同じ言葉でひとくくりにすると、危険を見落としやすくなります。
金融庁が個人間融資に注意喚起する理由とは
SNS型の個人間融資には、業者が個人になりすましている場合があります。金融庁は、こうした取引に対してくり返し注意をうながしています。日本貸金業協会も、同じく警戒を呼びかけています。
理由は、トラブルの中身にあります。違法な高金利を求められる、返済が遅れると脅される、保証料だけ振り込ませて姿を消す。こうした被害が報告されています。SNSの個人間融資は、ヤミ金が紛れ込んでいる可能性が高いと言われています。気軽に手を出してよい相手ではありません。
個人間融資の借金に時効はある?
「個人どうしの貸し借りなら、時効なんて関係ないのでは」と思うかもしれません。けれど、それは誤解です。個人間のお金にも、法律のルールはきちんと及びます。ここでは、時効という言葉の意味から確認していきます。
個人間の貸し借りにも消滅時効が適用される
お金を返してもらう権利には、期限があります。一定の期間がすぎると、その権利は消えてしまいます。これを消滅時効といいます。業者からの借金だけでなく、個人間融資にも同じルールが働きます。
民法は、この消滅時効を定めています。貸した相手が個人か業者かは関係ありません。個人間融資のお金にも、消滅時効は成立します。長く放置された権利は、守られにくくなる。そういう考え方が背景にあります。
「時効になる」とはどういう状態を指すのか
時効が成立すると、貸した側は返済を法的に求められなくなります。借りた側は、返さなくてよい状態になります。期間がすぎただけで、支払う義務が消える可能性が生まれるわけです。
ただし、注意点があります。時効は、期間がすぎた事実だけで完結するものではありません。借りた側がそれを使うと意思表示して、はじめて効果が出ます。「時効になる」と「時効を使う」は別の話だと覚えておきましょう。
時効が来ても自動では消えない理由とは
ここが、多くの人がつまずくところです。期間が経過しても、借金が勝手に消えるわけではありません。借りた側が何もしなければ、債権はそのまま残ります。
返済義務をなくすには、借りた側が「時効を主張する」という行動が必要です。これを援用といいます。時効は、援用しなければ効果が生じません。放っておけば消える、という思い込みは危険です。
個人間融資の時効は何年で成立する?
肝心の年数を見ていきましょう。個人間融資の時効は、お金を借りた時期で変わります。2020年4月1日の民法改正が、大きな分かれ目です。この日を境に、適用されるルールが切りかわります。
2020年4月以降の借入は原則5年
2020年4月1日以降に成立した貸し借りには、改正後の民法が使われます。新しいルールでは、時効の期間が整理されました。原則として、5年で時効が成立します。
正確には、2つの数え方があります。「権利を行使できると知った時から5年」と「権利を行使できる時から10年」です。個人間融資では、貸した側がいつ返してもらえるかを把握している場合が多いです。そのため、2020年4月以降の個人間融資は、原則5年で時効になります。
2020年3月以前の借入は10年
お金を貸したのが2020年3月31日以前なら、改正前の古いルールが残ります。これは経過措置と呼ばれる扱いです。借りた時点の法律が、そのまま生き続けるイメージです。
改正前の民法では、個人間の貸金は「権利を行使できる時から10年」で時効でした。借りた時期が施行日より前なら、時効は10年です。5年だと早合点して請求を怠ると、貸した側が損をすることもあります。
5年と10年どちらが適用されるか迷うケースとは
判断に迷う場面もあります。借用書がない、返済日を決めていない。こうしたケースでは、貸した側がいつ請求できるかがあいまいになります。すると、5年か10年かの線引きが難しくなります。
実務では、安全をみて10年と考える例も少なくありません。自己判断で「5年すぎたから大丈夫」と決めるのは危険です。下の表で、ざっくり整理しておきます。
| 借りた時期 | 適用される民法 | 原則の時効期間 |
|---|---|---|
| 2020年4月1日以降 | 改正後 | 5年 |
| 2020年3月31日以前 | 改正前 | 10年 |
| 返済日や借用書が不明確 | 状況による | 個別に慎重な判断が必要 |
時効はいつから数える?起算点の考え方
時効が5年や10年といっても、「いつから」数えるかで結論は変わります。このスタート地点を起算点といいます。ここを取り違えると、計算が丸ごとずれてしまいます。落ち着いて確認していきましょう。
返済期限を決めている場合の起算点
返済日を約束していた場合は、話がシンプルです。その期限の翌日から、時効の数えはじめになります。たとえば「来年の3月末に返す」と決めていたなら、その翌日がスタートです。
期限がはっきりしていると、貸した側はいつから請求できるかを把握できます。そのため、返済期限を決めた個人間融資は、期限の翌日が起算点になります。日付の記録は、後でとても役に立ちます。
返済期限を決めていない場合の起算点
「余裕ができたら返してね」。こうした口約束は、期限を決めていない貸し借りです。この場合の起算点は、お金を渡した日が基準になると考えられています。請求できる状態が、貸した時点から始まっているからです。
ただし、解釈が割れる場面もあります。最後に返済があった日の翌日を起算点とみる考え方もあります。期限なしの貸し借りは、起算点があいまいになりやすい点に気をつけましょう。
借用書がない口約束のケースはどうなるのか
借用書がないと、貸した事実そのものの証明が難しくなります。とはいえ、書面がないから時効が成立しない、という話ではありません。口約束でも、貸し借りがあれば時効は進みます。
問題は、いつから何年なのかを示す材料が乏しいことです。振込の履歴やメッセージのやりとりが、手がかりになります。借用書がなくても、時効は進行します。記録が残っているかどうかが、後の判断を左右します。
時効が成立しない・リセットされるのはなぜ?
「5年たったはずなのに、なぜか時効にならない」。そんな相談は珍しくありません。時効には、途中でふりだしに戻る仕組みがあります。これを更新といいます。知らないと、思わぬ落とし穴になります。
債務の承認で時効が更新されるケース
借りた側が「借金がある」と認めると、時効はリセットされます。これを債務の承認といいます。たとえば、少しだけ返す、返済を待ってほしいと頼む。こうした行動が承認にあたります。
承認があると、それまで進んだ期間がゼロに戻ります。そして、また最初から数えなおしです。一部でも返済すると、時効が更新されてしまいます。気づかないうちに、時効が遠ざかることもあります。
裁判・支払督促で時効が更新されるケース
貸した側が裁判を起こすと、時効の進行は止まります。そして判決が確定すると、時効はリセットされます。さらに、確定後の時効期間は10年に延びます。
支払督促という手続きでも、同じことが起きます。届いた書類を無視して放置すると、確定判決と同じ効果が生まれます。裁判書類を見逃すと、時効が更新されてしまうおそれがあります。郵便物のチェックは大切です。
催告・差押えによる完成猶予とは
更新とは別に、完成猶予という仕組みもあります。これは、時効の完成を一時的にストップさせるものです。たとえば催告書が届くと、6ヶ月間は時効の完成が先延ばしになります。
差押えや、話し合いを行う旨の書面での合意も、完成猶予の対象です。猶予の間に貸した側が裁判などを起こすと、時効はさらに遠のきます。催告書が届いた時点で、時効の完成は難しくなります。
時効を主張するには援用が必要な理由とは
期間がすぎても、黙っていては効果が出ません。時効を使うには、自分から主張する手続きが必要です。これが援用です。ここを丁寧にやるかどうかで、結果が大きく変わります。
時効援用とは何をする手続きか
援用とは、貸した側に「時効が成立したので、もう支払いません」と伝えることです。口頭でも理屈の上では成立します。けれど、言った言わないの争いを避けるため、書面で行うのが基本です。
援用には、慎重な確認がいります。本当に期間がすぎているか、更新されていないか。援用は、内容を間違えると借金が復活するおそれがあります。手順をふんで進めることが欠かせません。
内容証明郵便で援用通知を送る流れ
実務では、内容証明郵便で援用通知を送ります。内容証明なら、いつ、誰が、どんな内容を送ったかが記録に残ります。これが後の証拠になります。
通知には、契約の特定や時効を援用する意思を書きます。文面はシンプルでかまいません。以下は、ごく基本的な書き方の例です。
通知書
私は、貴殿との令和○年○月○日の金銭の貸し借りについて、
すでに消滅時効が完成しているものと考えます。
つきましては、本書面をもって時効を援用し、
当該債務の支払い義務がないことを通知いたします。
令和○年○月○日
(住所・氏名)
自分で連絡して時効が消えてしまう失敗例
援用の前に、自分から相手に連絡してしまう。これがよくある失敗です。「もう少し待ってほしい」と伝えると、それが承認とみなされます。すると時効が更新され、それまでの期間が無駄になります。
少額でも返してしまうと、同じことが起きます。良かれと思った行動が、裏目に出るわけです。援用の前に債権者へ連絡すると、時効が消えることがあります。動く前に、まず確認するのが安全です。
貸した側が時効を防ぐにはどうすればいい?
ここまでは借りた側の視点が中心でした。次は、貸した側の立場です。回収できないまま時効を迎えると、お金は戻ってきません。そうならないための備えを、具体的にみていきます。
借用書・契約書で返済期限を明確にする
貸す段階での備えが、いちばん効きます。借用書や契約書を作り、金額と返済期限を書きましょう。期限がはっきりしていれば、起算点があいまいになりません。
書面があると、貸した事実の証明も楽になります。金額・日付・返済期限・署名をそろえておくのがおすすめです。口約束だけだと、後で立証に苦労します。最初のひと手間が、後の安心につながります。
返済が滞ったら早めに請求し記録を残す
返済が止まったら、放置しないことが大切です。請求の連絡を入れ、そのやりとりを残しておきましょう。メールやメッセージは、立派な記録になります。
催告書を送れば、6ヶ月の完成猶予が得られます。その間に次の手を打てます。早めの請求と記録が、時効を防ぐ第一歩です。動かずに待つほど、不利になりやすいと考えましょう。
時効が近いときに取れる法的手段とは
時効の完成が迫っているときは、法的な手続きが選択肢になります。裁判を起こせば、判決の確定で時効はリセットされます。しかも、その後の期間は10年に延びます。
支払督促も、比較的手軽な方法です。手続きの進め方には専門知識がいります。期限が近いほど、専門家に相談する価値が高くなります。間に合うかどうかは、動き出すタイミング次第です。
個人間融資が闇金だった場合の時効と返済義務は?
SNSの個人間融資では、相手がヤミ金だったというケースがあります。違法な貸付の場合、時効や返済義務の考え方は変わってきます。ふつうの貸し借りと同じに扱うと、判断を誤ります。ここは特に注意が必要です。
違法な高金利の元本に返済義務はあるのか
ヤミ金は、法外な利息で貸し付ける違法な業者です。こうした貸付については、特別な扱いがあります。違法に渡されたお金は、元本もふくめて返す義務がないとする考え方が示されています。
つまり、利息だけでなく元本についても返済を拒める可能性があります。ヤミ金からの借入は、元本も含めて返済義務がないと考えられています。ただし、相手が本当にヤミ金かの見極めは慎重に行う必要があります。
闇金からの借入を踏み倒すリスクとは
法律上、ヤミ金への返済を拒むことは可能です。とはいえ、現実のリスクは別にあります。激しい取り立てや、嫌がらせを受けるおそれがあるからです。
自分だけで対応すると、かえって状況が悪くなることもあります。ヤミ金には、自己判断で対処しないのが安全です。返さなくてよいからと放置するのではなく、専門家を頼る判断が現実的です。
闇金トラブルの相談先はどこか
ヤミ金の問題は、専門家への相談が近道です。弁護士や司法書士は、取り立てを止める交渉を代わりに行えます。警察や消費生活センターも、相談先になります。
被害を一人で抱え込まないことが大切です。早く動くほど、被害は小さくなります。ヤミ金トラブルは、早めに専門家へ相談しましょう。連絡先がわからないときは、公的な窓口から始めれば十分です。
個人間融資の時効トラブルは誰に相談する?
時効の判断には、専門知識がいります。年数の計算や更新の有無を、素人だけで見きわめるのは難しいものです。最後に、相談先の選び方を整理します。費用の目安もあわせて押さえておきましょう。
弁護士・司法書士に相談するメリット
専門家に頼む最大の利点は、判断ミスを防げることです。本当に時効が成立しているか、更新されていないか。プロが事前にチェックしてくれます。
援用通知の作成や送付も任せられます。債権者とのやりとりも、代わりに行ってもらえます。自分で動いて時効を消すリスクを、専門家が防いでくれます。繊細な手続きほど、第三者の目が役立ちます。
相談費用と依頼費用の目安
費用は、依頼先によって変わります。一般的な目安として、司法書士への依頼は5万円から8万円ほどとされています。弁護士の場合は、5万円以上が相場と言われています。
金額だけでなく、対応できる範囲も確認しましょう。初回の相談を無料にしている事務所も多くあります。見積もりを取って比べると、納得して進めやすくなります。
無料相談窓口・公的機関の活用法
費用が気になるなら、公的な窓口から始める手もあります。各地の法律相談センターや、消費生活センターが利用できます。費用をかけずに、まず状況を整理できます。
そこで方向性が見えたら、専門家への正式な依頼を検討すればよいわけです。無料の窓口を入り口にすると、相談のハードルが下がります。いきなり費用を払う必要はありません。
よくある質問(FAQ)
個人間融資の借金は5年放置すれば必ず消えるのか
必ず消えるわけではありません。5年が経過しても、援用という手続きをしなければ効果は出ません。さらに、途中で更新があれば期間は数えなおしです。
借りた時期が2020年3月以前なら、そもそも10年が必要です。放置だけで安心するのは禁物です。期間と更新の有無を、両方とも確認しましょう。
借用書がなくても時効は成立するのか
成立します。借用書がないことと、時効が進むことは別の話です。貸し借りの事実があれば、時効は経過していきます。
ただし、起算点や金額の証明は難しくなります。振込履歴やメッセージが手がかりになります。記録が残っているかどうかが、判断の分かれ目です。
時効が過ぎた後に督促が来たらどう対応するのか
あわてて返事をしないことが大切です。「待ってほしい」と答えると、承認とみなされて時効が更新されます。少額の支払いも、同じく更新の原因になります。
まずは、時効が本当に成立しているか確認しましょう。その上で、援用の手続きを進めます。自己判断で連絡する前に、専門家に相談するのが安全です。
相手の住所が分からない貸金も時効になるのか
時効は進みます。相手の所在がわからなくても、期間の経過は止まりません。ただし、貸した側が裁判を起こす方法もあります。
公示送達という手続きを使えば、相手が不在でも裁判は進められます。その結果、時効が更新される場合もあります。住所不明だから安心、とは言いきれません。
一部だけ返済すると時効はどうなるのか
時効はリセットされます。一部の返済は、借金を認める行為とみなされるからです。これを債務の承認といいます。
たとえ少額でも、効果は同じです。返済した時点から、また期間の数えなおしになります。良かれと思った行動が、時効を遠ざけることもあります。
まとめ
個人間融資のお金にも、時効はきちんと働きます。原則は5年、2020年3月以前の借入は10年が目安です。ただし、援用しなければ効果は出ません。途中の承認や裁判で、期間がリセットされる点も見落とせません。貸した側も借りた側も、まず自分のケースの起算点と更新の有無を確かめることが出発点になります。
なお、時効が成立した場合でも、信用情報の扱いや過払い金の有無など、確認しておきたい論点は残ります。相手が業者か個人かで、調べるべき書類も変わってきます。判断を誤ると不利益が大きい分野です。動き出す前に、振込の記録ややりとりを手元にそろえておきましょう。そのうえで、無料の相談窓口や専門家に状況を伝えるのが、確実な進め方です。
参考文献
- 「民法(第147条・第166条 ほか)」-e-Gov法令検索
- 「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」-法務省
- 「SNS等を利用した『個人間融資』にご注意ください!」-金融庁
- 「悪質な金融業者にご注意!」-日本貸金業協会
- 「支払督促・訴訟手続の案内」-裁判所